環境感染
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新病棟稼働後の病院内環境細菌叢の変遷
赤羽 貴行川上 由行沖村 幸枝太田 伸全田 浩緒方 洪之
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キーワード: 新病棟, 院内環境, 細菌叢
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1995 年 10 巻 2 号 p. 6-11

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抄録

院内感染の中でcompromisedhostに対する感染症はヒトの常在菌や病院内環境細菌などの弱毒菌によって起こる場合もある. 今回, 新病棟への一部移転に伴い, 旧病棟と新病棟の細菌叢の比較と新病棟の経時的な環境細菌叢の調査を行った.
旧病棟ではブドウ糖非発酵菌が約50%ともっとも多く, 以下グラム陽性桿菌, 真菌の順となった. また, 新病棟では移転前1週間から移転後2週間では非発酵菌が50%以上検出され, ついでグラム陽性桿菌が検出された. 移転後1ヵ月からはグラム陽性桿菌が50%以上となり, 非発酵菌の分離率と逆転した. 真菌は全調査期間を通して常に10%以下で推移していた. 一方, 腸内細菌科の菌種は移転後2週間から検出され始め, 約1-2%前後で推移していた.
病棟移転後の環境中の細菌叢は一定しておらず, 弱毒菌以外の細菌も検出された. また, 院内感染は病院内の独自の菌株 (hospital strain) が密接に関連しているといわれていることからも, 今後も定期的な院内環境調査を行い, 院内環境分離菌の頻度と臨床材料由来菌との成績の比較や, 環境由来菌による院内感染症の解析に努める必要があると思われた.

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© 日本環境感染学会
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