抄録
産婦人科で患者の膣や外陰部の洗浄に用いている診療ユニットの温水器を検索したところ, 滅菌蒸留水を使用しているにもかかわらず, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌などが検出されたことを先の本学会誌 (松宮, 他, 1994年) で報告した.
そこで, 今回はその温水器の有効な除菌対策を検討すると同時に, その効果を13ヵ月にわたり定期的な調査とそれに続く抜き打ち検査を行うことにより検討した.
温水器はその材質のためアルコール消毒, EOG滅菌, 高温滅菌ができないことから, 次善の策として容器の乾燥, 清掃, 消毒液による消毒を検討したところ, 温水器内の乾燥や清掃では十分な除菌効果は得られなかった.
一方, 温水器内を十分に洗浄後, 0.1%塩化ベンザルコニウム液で1時間消毒する方法では消毒後菌は検出されず, 1週間ごとに手順通りの対策を行ったところ, 温水器内の細菌汚染は6ヵ月以上にわたり認められなくなった. しかしその後, 電熱線を覆っているビニールチューブは温水器内の水を空けると電熱線の熱により比較的容易に破損し, この破損部位に細菌が付着し増殖しやすくなることが判った.
今回, 検討した診療ユニットは産婦人科病棟において一般に広く使用されているが, 温水器の下部に水が停滞する, 清掃時の取扱が簡単ではない, 電熱線が破損しやすいという問題があり, この装置の構造の改良が強く望まれる.