環境感染
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手術時手洗い水について, 滅菌水の必要性に関する検討
高尾 佳保里山岸 善文根ヶ山 清藤田 次郎石田 俊彦
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2003 年 18 巻 4 号 p. 430-434

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抄録
欧米やアジア, アフリカ地域では, 手術時手洗い水に水道水を使用している.水道水でなく, 滅菌水を使用することに関する科学的根拠は特にない.わが国では滅菌水の使用に加えて, スリッパの履き替え, 高性能フィルターの多用等の感染対策を習慣的に実施してきた.最近では滅菌水がどれ程感染防止に有効なのか, むしろ不必要ではないのかという研究結果も報告されてきている.今回我々は, 1) 当センターおよび香川県の主要病院おいて水道水及び滅菌水の中に細菌が存在するか, 否かを検討し, 2) 水道水と滅菌水を使用した場合の手術時手洗いの効果をパームスタンプ法→フィンガープリント法やグローブジュース法にて比較, 検討し, 3) 水道水と滅菌水の塩素濃度を比較し, 4) 滅菌水の使用を中止した場合どれほどのコスト削減の効果があるのか等を研究した・当センターでは水道水と滅菌水の両方とも, 培養にて細菌は検出されなかった.他の主要病院でも同様な結果が得られた.水道水で手洗いした場合の滅菌タオルで拭き取った後の細菌数は, 滅菌水で手洗いした場合との比較では有意差を認めなかった.グローブジュース法でも同様の結果であった.今回の実験結果によると, 個人差も考慮する必要はあるが, 手術時手洗いに滅菌水が必要という根拠はないと考えられた.これによるコスト削減は, 手洗い装置450~500万円/台, フィルター交換代1万円/年, 限外ろ過膜交換代15~20万円/3年が不必要となる計算である.
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© 日本環境感染学会
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