環境感染
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急性期型総合病院におけるインフルエンザ院内感染の検討
上村 桂一源馬 均中山 貴美子佐藤 雅樹毛受 百合鈴木 健之
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2007 年 22 巻 1 号 p. 7-12

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抄録
インフルエンザは感染力が強く, しばしば病院内で流行するため, その院内感染対策はきわめて重要である. 今回, 我々は病床数400の急性期型総合病院において, 2002年秋から2005年春までの3シーズン中のインフルエンザ院内感染を調査し, 現状の把握を行った. 2002年秋から2005年春までの全シーズンにおいて, 入院中にインフルエンザと診断された患者は50例であり, うち37例 (74%) が院内感染と考えられた. 50例の発症から診断までの日数を調査した結果, 34例 (68%) が発症当日または発症翌日に診断されていた.しかし, 38℃ 以上の発熱で発症した25例と発症時の体温が38℃ 未満の25例を比較したところ, 発症時に38℃ 未満だった群は診断が遅れる傾向にあった. 院内感染の37例中, 11例 (30%) で感染源を推定できたが, 残りの26例 (70%) では感染源不明であった. インフルンザと診断された患者の同室者162名中, 抗インフルエンザ薬の予防内服をなしえた78名では, インフルエンザの発症を認めなかったが, 予防内服できなかった84名のうち2名にインフルエンザが発症した.インフルエンザは発症直後の症状の乏しい時期でも感染源となりえること, くわえて発症当日の迅速診断検査は3割程度が偽陰性を示すので, 早期診断, 早期隔離だけの院内感染対策では, 不十分であろう. 入院患者がインフルエンザに暴露する機会を減少させ, 暴露後の予防内服を推奨する具体的方策が必要と思われた.
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© 日本環境感染学会
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