環境感染
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重症救急患者病室 [救急ICU] における環境細菌の検討
その変動と薬剤耐性
高橋 泰子林 キイ子小林 寛伊都築 正和
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1988 年 3 巻 2 号 p. 22-28

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抄録

東大病院救急重症患者病室 (救急ICU) では, 病室環境を清浄に保つ為に, 0.2%グルタールアルデヒド水溶液噴霧による病室の定期的消毒 〔以下GA消毒と略す〕 と, 0.1%アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩水溶液による毎朝の病室床モップ清掃を行っている. 我々は, 本病室の床細菌叢中特に優勢な数種類のグラム陰性桿菌数株について, 3年間にわたりABPC, SBPC, CEZ, MINO, AMK, GM, NAの7薬剤の3濃度ディスクを用いて薬剤感受性を検討した結果, GA消毒により7薬剤に対して感受性の低下した菌株が除去される傾向が見られた事を報告する. 対象とした床検出グラム陰性桿菌は, Xanthomonas maltophilia 88株, Acinetobactey 79株, Serratia 53株, Pseudomonas fluoyescens 41株, P. aeruginosa 40株, Flavobacterium 37株, P. putida 33株, Enterobacter 29株, その他104株の計505株である. GA消毒後の経過期間を約3ヵ月ごとに区切り, I期, II期としてその時期に検出された菌株の薬剤感受性を比較すると, 供試7薬剤中で感性薬剤数が0, 1剤以下, 2剤以下, 3剤以下の各菌株数の割合が, 病室環境が比較的清浄なI期に比しII期以後に増加する傾向が見られた. また, 一度増加したこの低薬剤感受性菌株の割合はGA消毒により減少する傾向が見られ, この傾向はGA消毒が約半年に1回のペースで行われるようになってさらに明確になった. 薬剤別では, II期に比しI期に感性菌株の頻度が増加する薬剤は各時期でいろいろであり, MINOは全体的にこの傾向が見られた.

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