抄録
1976年から1984年までの9年間に, 大阪市立大学第二外科で手術をうけた患者の術後感染巣から黄色ブドウ球菌 (黄ブ菌) が分離された45例のうち, ディスクによる感受性検査でampicillin (ABPC) に対し (++) 以上の感受性を示した菌 (ABPC感性群) が検出された23例と,(+) 以下の感受性を示した菌 (ABPC耐性群) が検出された22例にわけて, それぞれの背景因子ならびに臨床経過を検討した.
年次別の耐性菌分離頻度は33~60%であるが, 1981年, 1982年にはさらに増加した. 同時期から多剤耐性菌も増加傾向が認められた.
年齢, 性別, 疾患の良悪, 手術汚染度 (無菌・準無菌) では両群間に差を認めなかった. 耐性群では手術時間が長く, 出血量が多かったが有意ではなかった. しかし, 小野寺のPNI (prognostic nutritional index) は有意に低下していた. また, 手術から感染発症までの期間は有意に短く, 逆に入院期間は有意に長くなっていた.
これら耐性菌の2/3はcefazolin (CEZ), gentamicin (GM), oxacillin (MPIPC) にも耐性であった. MIC分布曲線ではCEZ, GM, MPIPCは2峰性を描き, 耐性化傾向が認められた. 3剤以上耐性の黄ブ菌が分離された14例についてさらに検討した結果, 全例とも前治療に黄ブ菌に抗菌作用を有するペニシリン剤あるいは第一世代セフェム剤が投与されており, これらに耐性を獲得した菌が遺残したものと推測された.