環境感染
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心臓外科病棟におけるMRSA感染症対策の経験
知々田 イク子脇島 知香子京谷 光子川上 小夜子紺野 昌俊
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1988 年 3 巻 2 号 p. 41-48

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抄録

重篤な心奇形を有する生後2ヵ月の男児に右側Blalock-Taussing手術を施行後, レスピレーターの離脱が困難となり, 長期人工呼吸管理を施行したが, その間, 血液や気管内吸引物よりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出されるようになった.
心臓外科病棟のように濃厚看護を必要とする特殊病棟にあっては, このような呼吸管理の他に授乳, おむつ交換といった保育をも含めて, 極めて濃厚に接触する必要がある重症患者を, 他の病室に移して隔離するということは必ずしも容易でない.
そのようなことから, 他の入院患者を出来得る限り制限しながら, MRSAの病棟内の拡散状況を調べ, それに対する対策を立てようとした. そして病棟内の徹底した拭き取り試験を実施したが, その結果からはMRSA患者周辺の床を日に2-3回紫外線照射することと, 医療従事者は一作業ごとに手および手で触れた器具や把手の部分をヒビテン・アルコールで拭き取るという, いわば最も原始的で素朴な方法を採用する以外MRSAの院内感染を阻止し得ないとの結論しか引き出すことが出来なかった. 現実に実行して, MRSAによる院内感染を阻止することは出来たけれども, 医療活動上は極めて大きな制限を受けることも事実であり, MRSA院内感染の抜本的対策を早急に考える必要があることを痛感し, それに言及した.

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© 日本環境感染学会
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