予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
高齢者のシームレスな社会参加と健康の関連
藤原 佳典
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2018 年 3 巻 1 号 p. 71-85

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抄録
少子高齢社会が進行する我が国では、高齢者は健康や社会経済的側面から最大多数の弱者となり得る。一方で、高齢者は就労やボランティアといった有償・無償の社会貢献の担い手としても期待される。高齢者の健康度を生活機能の側面から見るとその推移に伴い社会参加の様相は就労からボランティア、趣味・生涯学習活動、更には、近所づきあい等のインフォーマルな交流へと徐々に推移することが多い。 本稿では、ライフコースに応じた社会参加活動の枠組みを体系的に示した。本来、人と社会との関わりとは長い人生の中で徐々に対象や形態を変えながらシームレスに継続されていくべきものである。そこで、高齢期の社会参加について、ボランティアや生涯学習活動というように単一の活動に限局することなく、ライフコースに応じた社会参加が健康に及ぼす影響についてのエビデンスをもとに総括した。 各ライフステージにおいて社会参加は健康に好影響を及ぼすものの、実際には、円滑に次のステージへ移行することは必ずしも容易ではなく、孤立・閉じこもりに陥る者も見られる。その背景には高次から低次の社会参加へと高齢者をライフコースに沿った形で縦断的、継続的にシームレスな支援を行う体制が十分整備されていないことが考えられる。高齢者の心身の状況に応じて適切な活動を適切な時期に移行できるよう多様な社会参加の資源を支援・コーディネートするシステムが求められる。
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© 2018 日本精神保健・予防学会
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