予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
心理的側面からみたpsychosis
松本 和紀
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2021 年 5 巻 1 号 p. 26-32

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抄録

本論では、psychosisの概念の心理的側面に関連するいくつかの話題を紹介する。統合失調症という用語を創出したE.Bleulerは統合失調症を症候群のように捉えていた。彼は、統合失調症の症状を、疾患過程から直接生じる症状と、疾患過程に対する心理的な反応として生じる二次性の症状とを区別しており、幻聴や妄想を含む統合失調症の症状の多くは二次性の症状として捉えていた。現代のpsychosisの認知行動モデルの多くは、生物-心理-社会的な要因によって引き起こされる精神病性の体験をどのように評定・解釈するかが陽性症状の出現や持続に対し決定的な役割を果たすと想定しており、当事者の苦痛や機能低下を引き起こす評定・解釈に働きかける介入が治療効果に結びつくと考えている。また、psychosisに対する早期介入においては、心理社会的な側面を含めた包括的な評価に基づいて治療や支援を行うボトムアップ的なアプローチが大切だと考えられている。統合失調症を含めたpsychosisは、生物学的要因のみならず、心理社会的要因の影響を受けて経過の軌跡が変化する異種性の高い病態の集まりであることを示唆する知見は増えており、こうした知見を統合するモデルを必要としている。

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© 2021 日本精神保健・予防学会
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