予防精神医学
Online ISSN : 2433-4499
強迫症・不安症の認知行動療法の作用機序と治療効果予測:脳画像にる検討
平野 好幸
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2021 年 5 巻 1 号 p. 33-40

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抄録
近年、強迫症や不安症の治療の選択肢として認知行動療法(cognitive behavioral therapy:CBT)が注目されている。CBTは患者の認知や行動をより適応的なものへと変容させていくことを援助する治療法であり、社交不安症や強迫症などに対して選択的セロトニン再取り込み阻害薬などによる薬物療法に劣らない治療効果を発揮することがわかっている。また、薬物療法との併用療法で高い寛解率を示すことなどから、その作用機序は薬物療法と異なると考えられている。認知行動療法の治療者の養成事業が各所で進められているが、CBTを十分に提供できる医療機関や治療者の数は依然として限られている。これらを背景としてCBTの作用機序の解明や治療反応性予測の必要性が高まっていることから、脳画像的アプローチによる研究が数多く進められている。これまでに我々は強迫症患者の脳の灰白質容積の検討から、左背外側前頭前皮質の灰白質容積の減少がCBTの治療抵抗性に関与していることを報告したが、近年は安静時脳機能結合などのアプローチも進められている。現在行われている大規模な国際的な多施設共同研究により、CBTによる治療効果の脳科学的解明が進むことで、治療法の改良や治療選択に役立つ指標の開発に役立つ可能性がある。
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© 2021 日本精神保健・予防学会
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