Japanese Journal of Endourology
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特集3 : 腹腔鏡下仙骨膣固定術 (LSC)
序文
横山 修髙橋 悟
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2021 年 34 巻 1 号 p. 55

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抄録

 骨盤臓器脱は, 自覚症状だけでは確定診断できないので, 正確な住民ベースでの疫学調査はこれまで報告されていないが, 腟内診だけを行った調査では住民の24-40%に骨盤臓器脱がみられたとの報告がなされている (Milsom I, 2009). すなわち多くの女性が臓器脱を自覚している現状がある. 骨盤臓器脱の根治的治療は手術療法であるが, 多くの女性, しかも高齢者に多いことから, より簡便なより低侵襲な手術が考案され実施されてきた. その典型が経腟メッシュ手術であるが, メッシュによる合併症が多く, 2011年FDA (Food and Drug Administration, 米国食品医薬品局) の警告もあり最終的に2020年で米国内での経腟メッシュ手術製品の使用が禁止された. わが国でも2019年5月でポリフォームが使用できなくなったが, 経腟メッシュ手術を行う場合は登録をした上で株式会社クラウンジュン・コウノの「ORIHIME」を用いることができる. 欧州においも同様で, 世界的な経腟メッシュ手術の中止・禁止の中で, 最近は腹部アプローチによる骨盤臓器脱手術が注目されている. その中でも腹腔鏡を用いることで低侵襲化を目指したのが腹腔鏡下仙骨腟固定術 (Laparoscopic sacrocolpopexy : LSC) である. 本邦で広く行われているフランス式LSCは, 多くの手術工程がある高難度の術式である. また, 骨盤臓器脱は症例により部位や程度のバリエーションが多いとされ, 術式を使い分ける必要がある. そこで本特集においては野村昌良先, 生成島雅博先生, 福島正人先生, 持田淳一先生にメッシュを用いた腹腔鏡下骨盤臓器脱手術の基本となる手技と個々の症例に合わせた工夫を解説いただいた. また, 2020年4月から骨盤臓器脱に対してロボット支援下仙骨膣固定術 (Robot assisted sacrocolpopexy) が保険収載となった. 佐々木ひと美先生には, より低侵襲なロボット手術について解説していただいた. 三方よしの骨盤臓器脱手術がひろく施行されることを願い本特集は企画された.

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© 2021 日本泌尿器内視鏡学会
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