Japanese Journal of Endourology
Online ISSN : 2187-4700
Print ISSN : 2186-1889
ISSN-L : 2186-1889
特集3:これから始めるロボット支援下仙骨膣固定術
序文
雑賀 隆史佐々木 ひと美
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 34 巻 2 号 p. 216

詳細
抄録

 2005年にFDAがda Vinciサージカルシステムの婦人科手術への使用を承認以降, 婦人科手術におけるロボット手術の割合は増加しており, 2016年には米国において年間10%の割合で婦人科領域でのロボット手術数が増加していることが報告されている.

 骨盤臓器脱に対する仙骨膣固定術は1957年に報告され, 1991年からは腹腔鏡下仙骨膣固定術 (Laparoscopic sacrocolpopexy以下LSC) が開始された. 開腹術と比較し骨盤腔など狭く奥深い術野での操作が必要となる仙骨膣固定術では, 腹腔鏡手術のメリットが高く, 開腹術と比較し合併症なども少ないことが報告され, 低侵襲かつ様々な骨盤臓器脱に対応できるというメリットから, 骨盤臓器脱治療のゴールドスタンダードとされている. しかし狭い骨盤腔内での鉗子を用いた複数回の縫合など高い技術が要求される術式であることは否めない. 2020年4月, 骨盤臓器脱に対するロボット支援下仙骨膣固定術 (Robot assisted sacrocolpopexy以下RASC) が保険収載された. LSCでの治療経験がありロボットシステムを保有する施設での導入は当然のことながら, ロボット手術のメリットである立体画像やズーム機能, 広い関節可動域を持つ鉗子の操作性の良さ, デュアルコンソールによる指導などLSCの経験が少ない施設でもRSC導入のハードルを下げることが可能であり, 女性泌尿器科疾患に特化した施設以外でも今後ロボット手術件数が増加することが予測される.

 そこで本特集ではこれからRASCを始める術者・施設に向けて各施設の取り組みを披露し, 本邦におけるRASCの効率的で安全な術式の確立を目的として企画した. 施設や術者基準などRASC新規導入から各施設の標準術式や工夫, 術者としての必要な経験に加え, 女性泌尿器科疾患治療に対する根本的な考え方など, 様々な視点から骨盤臓器脱に対するRASCの有用性について述べられている. これからRASCを始めようとする術者の先生方に是非参考にしていただき, 多くの女性泌尿器科患者を救っていただきたい.

著者関連情報
© 2021 日本泌尿器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top