日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
ポリスチレンスルホン酸カルシウム服用中に発症した高齢者大腸穿孔の1救命例
藤竹 信一内田 大樹滝川 麻子小田 和重川瀬 義久浦野 誠竹内 元一
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2008 年 11 巻 5 号 p. 443-448

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抄録

症例は88歳,女性。腎機能障害と高カリウム血症にて近医よリポリステレンスルホン酸カルシウムが処方されていた。強度の腹痛にて当院に搬送され,CTにて左腎周囲におよぶ腹腔内遊離ガス像,腸管壁に囲まれない腸管内容物と思われる像を認め,左側結腸穿孔,後腹膜腔への穿破,汎発性腹膜炎と診断した。入院直後,急性呼吸循環不全に至り各種処置で全身状態の安定をはかった後,手術を施行した。下行結腸から直腸Ra(第2仙椎下縁の高さより腹膜反転部までの上部直腸)までの色調が不良で,左側後腹膜腔にも液体とガスが貯留し結合織も融解していた。色調不良な腸管を切除しHartmann手術とした。浮腫性変化が強く硬便があったS状結腸に穿孔を認めた。病理組織学的には穿孔周囲組織に多数の好塩基性結晶様異物が観察され電解質吸着剤による腸管穿孔と診断された。同剤服用中の患者の排便コントロールなどには細心の注意を払う必要がある。

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© 2008 日本臨床救急医学会
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