日本臨床救急医学会雑誌
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11 巻, 5 号
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原著
  • ―中心静脈穿刺合併症の減少を目指して一
    水島 靖明, 井戸口 孝二, 石川 和男, 松岡 哲也, 横田 順一朗
    原稿種別: 原著
    2008 年 11 巻 5 号 p. 417-420
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    われわれは侵襲的処置をデータベース化することにより合併症の種類,頻度などを分析し結果を公表してきた。今回は,このような情報公開,危険因子の認識が,処置の内容や合併症の頻度などに与える影響について検討した。対象はデータベース化および情報公開を行った期間の中心静脈穿刺を対象とし,分析結果を公表した節目で対象を二期に分け比較検討した。その結果,合併症全体の発生率は前期(2000.1~2001.8)1,108回と後期(2002.1~2003.8)661回とでは有意な差(前期12.1%,後期11.3%)を認めないが,気胸の合併率については後期で有意に低値となった(前期2.4%,後期1.1%,p<0.05)。後期では危険因子の認知からエラーを避ける工夫がなされ,データ登録と情報の入手が侵襲的処置における合併症の低下につながっていたと考えられた。医療安全の面からも侵襲的処置などについては登録制度を設け,情報を公開することが重要と思われた。

  • 清水 聡, 広間 文彦, 相馬 祐人, 鷹野 留美, 佐々木 敏雄, 陳 明俊, 岡本 三希子, 川合 一良
    原稿種別: 原著
    2008 年 11 巻 5 号 p. 421-427
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    過去1年間に京都南病院救急部に救急搬入された救急症例を用いて,救急症例の初療時の血糖値について分析評価を行った。概略的な重症度分類を用いても重症化するほど血糖値は上昇している傾向があり,糖尿病の有無にて区分して評価すると,糖尿病を基礎疾患にもつ救急症例のほうが,血糖値は上昇していた。重症症例においての血糖値の上昇は,糖尿病因子よりも重症度因子がより関与していた。血糖値200mg/dlの指標と糖尿病の有無とで,重症度との関連を評価すると,初療時血糖値が200mg/dl以上で糖尿病がある場合は非重症例が多く,糖尿病がない場合は重症例と非重症例とがほぼ同等で,初療時血糖値が200mg/dl未満では非重症例が多いが,糖尿病がある場合は転帰が不良であった。

  • ―神戸市における介護施設からのCPA症例搬送の検討―
    中尾 博之, 早原 賢治, 吉田 剛, 高橋 晃, 陵城 成浩, 遠山 一成, 安藤 維洋, 李 俊容, 川嶋 隆久, 石井 昇
    原稿種別: 原著
    2008 年 11 巻 5 号 p. 428-433
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    救急医療に対する負荷を減らすために,介護施設のCPA症例に関するデータから医療施設と介護施設が協調するための課題を抽出し,その解決策を提案する。平成16年1月1日からの3年間における神戸市内の介護施設(市内112施設)で発生したCPA症例のうち,神戸市消防局が搬送した304件の死因,時間帯の特徴,年齢分布,施設種別について検討した。CPA発生の時間帯に関して調べてみると,1日に3度のピーク(8時,12時,18時)があった。年齢分布では80歳から92歳までがとくに多かった。搬送依頼をした上位11施設はいずれも特別養護施設であった。地域メディカルコントロール協議会などが中心となって,特別養護老人施設における緊急時の対応についてさらなる整備が必要であることが明らかになった。また,蘇生または治療方針をあらかじめ確認しておき,介護施設が契約している関連医療機関をさらに活用する必要がある。

調査・報告
  • ―研修医へのアンケート調査を通して―
    安藤 雅樹, 竹内 昭憲, 谷内 仁, 増田 和彦, 服部 友紀, 久保 貞祐, 祖父江 和哉
    原稿種別: 調査・報告
    2008 年 11 巻 5 号 p. 434-439
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    当院臨床研修プログラムには,1年目に救急専従医のいない二次救急医療施設(以下一般病院),2年目に大学病院で研修するプログラムおよび2年間大学病院で研修するプログラムがある。2年目研修開始時で救急研修目標の到達度に差があることを実感したため,標準化された救急医療の教育状況を把握する目的で,当院2年目研修医54名に対しBLS,ACLS,JATECTM,JPTECTMの理解度と受講歴につきアンケート調査し,研修プログラム別に二群に分類,集計した。理解度はBLS,ACLSでは両群間に差はなかったが,JATECTM,JPTECTMでは一般病院群で15.6,3.1%,大学病院群で86.4,72.7%と一般病院群で有意に低かった。BLS,ACLSの受講歴は大学病院群に比し,一般病院群において未受講者が多数存在した。救急専従医のいない施設では,研修医に対し十分な外傷初療教育が行われていないことが示唆された。

臨床経験
  • 森本 文雄, 吉岡 伴樹, 澁谷 正徳, 鈴木 義彦, 末吉 孝一郎, 松越 拓
    原稿種別: 臨床経験
    2008 年 11 巻 5 号 p. 440-442
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    はじめに:外傷診療研修(JATEC)コースの胸部X線読影法を用い研修医に対し指導した。その教育効果を検証した。対象および方法:救急部ローテーションの研修医を対象に,ローテーション開始時に解剖学的ガイドラインに基づく胸部単純写真の読影方法を講義し,読影実習を行った。実習では研修医が胸部外傷患者の胸部単純写真を1例ずつ読影し,指導医がCTを用いてフィードバックした。20点満点の正誤問題を指導前後で解答させた。結果:22名の研修医が対象となった。20点満点の正誤問題は,平均15.1点から18.4点へと全員の得点が上昇した。まとめ:JATECコースの胸部X線読影法を用いた指導により,研修医の胸部外傷に関する知識は増加した。本法は各病院単位で実施可能な,比較的簡単な外傷診療の教育方法と考えられた。

症例報告
  • 藤竹 信一, 内田 大樹, 滝川 麻子, 小田 和重, 川瀬 義久, 浦野 誠, 竹内 元一
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 5 号 p. 443-448
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    症例は88歳,女性。腎機能障害と高カリウム血症にて近医よリポリステレンスルホン酸カルシウムが処方されていた。強度の腹痛にて当院に搬送され,CTにて左腎周囲におよぶ腹腔内遊離ガス像,腸管壁に囲まれない腸管内容物と思われる像を認め,左側結腸穿孔,後腹膜腔への穿破,汎発性腹膜炎と診断した。入院直後,急性呼吸循環不全に至り各種処置で全身状態の安定をはかった後,手術を施行した。下行結腸から直腸Ra(第2仙椎下縁の高さより腹膜反転部までの上部直腸)までの色調が不良で,左側後腹膜腔にも液体とガスが貯留し結合織も融解していた。色調不良な腸管を切除しHartmann手術とした。浮腫性変化が強く硬便があったS状結腸に穿孔を認めた。病理組織学的には穿孔周囲組織に多数の好塩基性結晶様異物が観察され電解質吸着剤による腸管穿孔と診断された。同剤服用中の患者の排便コントロールなどには細心の注意を払う必要がある。

  • 山香 修, 坂本 照夫, 菊間 幹太, 山下 典雄, 高松 学文, 吉無田 太郎, 神代 由紀, 宇津 秀晃, 高宮 友美, 冬田 修平
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 5 号 p. 449-453
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    非侵襲的体外式陰圧換気法であるBiphasic Cuirass Ventilation(以下BCV)と人工呼吸器を併用することで,膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenator,以下ECMO)および人工呼吸器からの早期離脱が可能であった重症呼吸不全の1症例を経験した。症例は,31才の女性で早期胎盤剥離にて緊急帝王切開術終了後,右気胸,右上葉無気肺および縦隔気腫を認めICUに入室となった。呼吸状態は安定していたが,入室2日目に突然SpO2が80%台まで低下した。気管挿管後,気管支鏡施行し右主気管支損傷が判明した。分離肺換気などの呼吸管理を行うも酸素化が改善せずECMOを導入した。ECMOを導入し良好な酸素化は得られたが,ECMOからの離脱困難な状況であった。そこで,入室4日目にBCVを併用したところ,4時間後にはECMOから,6日目には人工呼吸器から離脱,12日目に退室した。BCVの併用は,ECMOおよび人工呼吸器からの早期離脱に有用であった。

  • 齋坂 雄一, 熊田 恵介, 福田 充宏, 沼本 敏
    原稿種別: 症例報告
    2008 年 11 巻 5 号 p. 454-460
    発行日: 2008/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    症例は76歳男性。C型慢性肝炎で通院治療中。3日前から嘔吐,下痢が続き近医に入院し,自血球と血小板の減少にて当院を紹介された。来院時は意識清明で頻呼吸だが循環動態は安定し,出血傾向を認めなかった。問診からグロリオサの球根誤食によるコルヒチン中毒を疑い,全身管理目的で集中治療室に入室させた。上部消化管内視鏡にて胸部中部食道の全周性びらんを認めた。G-CSF(granulocyte-colony stimulating factor)投与,血小板輸血などで骨髄抑制の時期を乗り越えたが,肺炎による呼吸障害と肝腎障害が進行し第18病日に死亡した。入院時の尿からはコルヒチンが検出され,病理解剖で肝小葉中間帯壊死などコルヒチン中毒による変化が確認された。食道びらんは搬痕狭窄を残さず治癒していた。本症例では,コルヒチンの排泄遅延が臨床経過に影響を及ぼした可能性が考えられた。

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