2009 年 12 巻 1 号 p. 37-42
がん医療の分野では,死別に至るまでの家族のケアを重視し,死別後の遺族のケア(グリーフケア)にも力を入れているが,救急医療においては困難であるのが現状であろう。筆者が経験した3例の症例を通して,自殺企図患者が死亡に至るまでの家族のケアがその後のグリーフケアにつながること,救急医療スタッフが2次的に遺族の心を傷つける可能性があること,災害急性期から遺族のケアも視野にいれた災害医療活動が必要であることなどを問題提起した。また,JR福知山線脱線事故での教訓を生かして発足した日本DMORT研究会での取り組みについても紹介した(DMORT:Disaster Mortuary Operational Response Team:災害時遺族・遺体対応派遣チーム)。救急医療における家族のケアは,医師のていねいな病状説明,看護師が家族に寄り添う姿勢,救急隊の声かけなどから実践できることであり,それが遺族のグリーフケアにつながるのである。