日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
沖縄県小浜島で発生したPublic Access Defibrillation(PAD)奏功例
山田 航希与那覇 博康紙尾 均高橋 孝典岩城 克則
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2009 年 12 巻 3 号 p. 356-361

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抄録

沖縄県小浜島(人口650人)において県内初のPublic Access Defibrillation(以下PAD)奏功例を経験したので報告する。症例:47歳,女性。2007年9月小浜島内のリゾート施設で室内清掃作業中に意識消失して倒れた。心停止状態と判断した従業員2人が,施設内に設置してあった自動体外除細動器(以下AED)を使用し心拍再開した。診療所医師が現場に到着時,意識レベルGCS 3点,自発呼吸微弱であったため診療所に搬送し気管挿管を施行。石垣島の県立八重山病院にヘリ搬送し,集中治療室に入室した。意識レベルは徐々に改善し,入院3日目には人工呼吸器から離脱した。AEDを解析したところ心室細動(VF)を認めた。冠動脈造影検査では有意な狭窄病変はなく,心エコー検査で左室壁肥厚を認め,基礎に肥大型心筋症の存在が示唆された。退院時には,ほぼ以前のADLを回復し,沖縄本島の病院で植込み型除細動器の植込み術を施行した。本例は適切な一次救命処置とPADにより心拍が再開し後遺症もなく完全社会復帰した。離島という地理的条件が厳しく,医療資材の乏しい不利な環境でも地域との協力により救命の連鎖が迅速に連動することを証明した1例であった。

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© 2009 日本臨床救急医学会
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