多発外傷における大腿骨骨幹部骨折に対する即時(受傷後24時間以内)髄内釘固定の是非については確立した基準はない。即時髄内釘固定とDamage control orthopedic surgeryの優劣を示すエビデンスもなく,治療の選択に迷う場合がある。多発外傷に合併した大腿骨骨幹部骨折を文献的に検討し,当科の治療基準を作成した。当科における即時髄内釘固定回避基準を以下に示す(1項目でも該当すれば回避する)。①低体温(深部温<35℃),②凝固異常(PT-INR>1.5,Plt<50,000/μl),③acidosis(pH<7.2),④呼吸不安定(P/F ratio<250),⑤循環動態不安定(non/transient responder,Shock),⑥緊急処置・手術を必要とする可能性がある胸腹部・頭部臓器損傷(処置・手術後は除く),⑦手術時間が6時間以上と見込まれる,①Gustilo-Anderson type ⅢBおよび血管損傷を伴うもの。さらに,作成した基準を用いて,過去4年間に当科に搬送された症例をretrospectiveに検討した結果,基準からはずれた治療を行っていた症例は少なく,おおむね妥当な基準と考えられた。
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