2009 年 12 巻 4 号 p. 453-457
症例は70歳代,男性。主訴は腹痛。来院時,意識障害,低血圧,徐脈,縮瞳を呈し,血中アミラーゼ値の増加を認め,急性膵炎と当直医に判断され,入院した。徐脈に対し硫酸アトロピンを投与していた。当直医は縮瞳と血中コリンエステラーゼ値の低下から有機リン中毒を疑い,救急科医師へ診療を依頼した。しかし,状況から有機リン中毒は否定的で,臭化ジスチグミンによるコリン作動性クリーゼと判断し,治療を引き継いだ。呼吸管理,循環管理に難渋したが,意識は回復し,人工呼吸器から離脱し,第7病日に昇圧剤も中止した。通常,コリン作動性クリーゼの発症は臭化ジスチグミンを投与して1週間以内の発症が多く,危険因子は高齢者,腎機能障害などとされる。高齢者人口の増加に伴い本症も増加すると思われる。とくに認知症を有する患者では危険因子の察知も困難となるため,十分な配慮のうえの投薬が望まれる。また来院患者の内服薬の把握は重要と思われる。