2009 年 12 巻 5 号 p. 495-500
症例は52歳,女性。特記すべき既往歴なく,突然の上腹部痛にて近医受診。画像所見から急性膵炎が疑われたため当センターヘ転送された。全身状態は安定しておりアミラーゼ値も正常であったため,精査を進めているうちに突然ショック状態となった。貧血の進行を認めたため腹腔内出血を疑い,緊急血管造影を施行。背膵動脈と上腸間膜動脈の吻合枝からの分枝部に動脈瘤を認め,同部から血管外造影剤漏出がみられた。同動脈瘤からの腹腔内への活動性出血に対して塞栓術による緊急血管内治療を試みたが,止血効果が不十分であったため開腹による止血術を加えた。術後経過は良好であったが,術後10日目に再度前下膵動脈アーケードに動脈瘤の再発・破裂を確認。塞栓術を施行し救命しえた。腹腔内動脈瘤破裂はまれな疾患であるが,治療が遅れると救命が難しい。また単純CTにおいて膵炎との鑑別が困難であることを念頭におく必要がある。当院での6症例の検討もふまえ,報告する。