2009 年 12 巻 5 号 p. 501-505
症例は68歳,男性。腹部大動脈瘤に対して2年前に当院で人工血管置換術を施行されている。救急受診3週間前から38℃台の発熱が持続するため入院精査を行ったところ,肺癌による腫瘍熱と判断された。退院後も38℃台の発熱が持続し,しだいに嘔気・嘔吐を伴うようになり,吐血も認められるようになったことから救急受診に至った。来院時全身状態は安定しており,上部消化管内視鏡にてMallory-Weiss症候群と診断され入院となった。入院後突然の大量吐血からショックとなった。緊急血管造影および腹部CTにて腹部大動脈から十二指腸内に造影剤の漏出を認めたため,腹部大動脈十二指腸瘻と診断し救急処置を行ったが,第2病日に死亡した。腹部大動脈十二指腸瘻は消化管出血の原因として緊急かつ重症疾患であり,リスクをもつ患者では常に考慮する必要がある。