日本がもつ救急医療システムは,日本社会にとつて最大最高のセーフテイーネットである。しかし,今その救急医療システムが危ない。救急医療システムを取り巻く社会経済環境の変化に対応したシステム全体の最適化のための再設計に取り組まなければならない。 再設計にあたっては, システムを総合管理する総合性,組織と機能との関連に着目した複合性,社会システムとしての社会性の3つの視点をもつ必要がある。将来的な持続可能性を担保した救急医療システムに改革していくためには,改革の重点を次の3点に絞り,具体的な作業に着手していく必要がある。第一に,救急医療システムの全体最適化の観点から,救急医療資源の確保・救急医療資源の配分・救急医療資源の再生産の戦略的な取り組みを可能とする,真に一元的かつ持続的な柔軟性に富んだシステムとしての救急医療に改革していく必要がある。第二に,このシステムとしての救急医療を支えるため,救急医療のための安定的な独自の財政基盤として,救急医療の特殊性が加味された,現場指向の救急医療保険制度を創設する必要がある。第三に,救急医療システムを支える国民的理解の向上が必要である。