日本臨床救急医学会雑誌
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臨床経験
造影剤腎症の危険性に関する臨床的検討と概念の見直し
久保 健児千代 孝夫
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2010 年 13 巻 3 号 p. 380-388

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抄録

目的:腎機能低下患者に対しての造影剤投与の腎への影響を検討した。方法:2006年の1年間に救急外来でイオヘキソールによる造影CTを施行した例のうち,施行時の血清クレアチニン値が2.0mg/dl以上であった例を対象とし,最大13日間の追跡を後ろ向きに行った。結果:該当した78例の内訳は,追跡可能群31例,原疾患による死亡25例,原疾患による血液透析6例,追跡不能群16例であった。追跡可能群では,造影剤投与前後でクレアチニン(mg/dl)は平均3.3から1.6へ,尿素窒素(mg/dl)は平均60から23へと改善していた。結論:造影剤腎症の確立された診断法は存在せず,それゆえに造影剤の有害性が喧伝されてきた。救急医療を施行するうえで造影CTが必要な場合,腎障害患者であっても適切な原疾患の管理により腎機能は改善するため,施行は可能である。

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© 2010 日本臨床救急医学会
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