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―1968-2007年の人口動態統計をもとに―
伊東 剛, 中村 好一
原稿種別: 原著
2010 年13 巻3 号 p.
275-282
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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緒言:一酸化炭素中毒による死亡についての統計を解析し考察した。方法:1968年から2007年の人口動態統計をもとに年齢調整死亡率を求めた。また,一酸化炭素中毒による死亡が急増した2003年から2007年について都道府県別の粗死亡率を求めた。結果:年齢調整死亡率は1984年にピークを形成した後漸減し,以後男性で人口10万対1.8-2.8,女性0.4-0.6で推移していたが,2003年以降男性4.9-7.1,女性0.9-1.2と急増が認められた。性差は1976年以降にみられ,男性の死亡率は女性の死亡率の1.8-6.8倍であった。粗死亡率が最高は青森で人口10万対7.1人,次いで岩手7.0,秋田6.8であった。最低は東京1.7で,次いで沖縄1.9,神奈川2.1であった。結論:一酸化炭素中毒死は,2003年以降急増しており,男性および東北地方に多い傾向が認められた。
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笠岡 俊志, 大塚 洋平, 牟田口 真, 熊谷 和美, 金子 唯, 河村 宜克, 鶴田 良介, 前川 剛志
原稿種別: 原著
2010 年13 巻3 号 p.
283-288
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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救急隊の活動中には現場や搬送の状況により良質な胸骨圧迫を実施できない可能性が指摘されている。本研究の目的は救急隊による心肺蘇生の質的評価と課題について検討することとし,救急救命士を対象に心肺蘇生の質に関するアンケート調査を行うとともに,蘇生訓練用シミュレーターを用いて胸骨圧迫の質および身体的ストレス度について評価した。アンケート調査では,蘇生活動時間のうち平均27%(中央値5分)は良質な胸骨圧迫を実施できていなかった。シミュレーターによる評価では,2分間の胸骨圧迫のうち約30%は良質な胸骨圧迫ではなかった。救急救命士の血圧・脈拍数・呼吸数で評価したストレス度は,胸骨圧迫実施前に比べ胸骨圧迫後に有意に上昇した。救急隊による心肺蘇生中には良質な胸骨圧迫を実施できない時間が存在し,改善策が必要である。
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竹内 昭憲, 田久 浩志, 中川 隆, 花木 芳洋, 斉藤 裕計, 小澤 和弘, 田渕 昭彦, 北川 喜巳, 荒木 恒敏, 野口 宏
原稿種別: 原著
2010 年13 巻3 号 p.
289-293
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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背景:2相性AEDが単相性AEDよりも救急隊に普及してきている。しかし,それらを比較した研究は少ない。単相性と2相性AEDの効果を比較した。方法:2006年に愛知県で救急隊接触時心室細動(VF)441例のうち除細動が施行された418例を対象とし,単相性AED群(n=133)と2相性AED群(n=285)に2分し,後ろ向きに1ヵ月後転帰を比較した。結果:単相性と2相性AED群の,年齢(歳)は66.1 ± 15.1 vs. 64.6 ± 16.2,男性の比率は81% vs. 79%,目撃された比率は71% vs. 79%,バイスタンダーCPRありの比率は50% vs. 50%,覚知-救急隊接触時間(分)は7.7 ± 2.4 vs. 8.0 ± 3.0,覚知-初回除細動時間(分)は11.0 ± 5.0 vs. 10.6 ± 4.3であった。現場から医療機関までの心拍再開率は22% vs. 24%,1ヵ月後生存率は28.6% vs. 28.8%,1ヵ月後生存患者のCerebral Performance Category(CPC)1は42% vs 46%,同CPC2は21% vs. 10%であった。いずれの項目も群間に有意差を認めなかった。結論:VFによる院外心停止患者の1ヵ月後生存率・神経学的予後への,救急隊のAEDの波形の違いによる効果の差は認めなかった。
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―長崎市救急実態調査から―
井上 健一郎, 草野 栄郷, 橋本 孝来, 高山 隼人
原稿種別: 原著
2010 年13 巻3 号 p.
294-302
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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救急の円滑な受け入れ体制構築のためには地域の救急実態の把握が必須である。長崎市では1997年より実態把握と救急隊へ情報還元のために,救急車搬送された患者全例の確定診断,転帰などに関する調査を行ってきた。今回10年間の調査結果を経時的変化も交え検討した(長崎地区人口は07年現在52万人)。10年間の推移をみると内因性・外因性疾患の比率は2:1で変化はない。疾患群では脳神経・循環器・呼吸器・消化器・骨折はそれぞれ全体の8~10%であり,その比率はあまり変化していない。しかし,疾患別にみると上位3疾患は肺炎,脳梗塞,大腿󠄀骨頸部骨折であり,なかでも脳梗塞を除いた2疾患は増加が著しい。一方,重症多発外傷,胸腹部臓器損傷はそれぞれ年間20~30件,30~40件であり,あまり増減はみられない。年間総搬送数は12,800件から18,200件に増加しているが,入院と外来の比率(入院50%,外来のみ35%)は変化なく,軽症者の増加というより高齢者の増加(33%→47%)が搬送増加の主因と考えられる。今後高齢者に多い疾患は加速度的に増加すると考えられ,これらの状況に応じた地域の医療整備が必要である。また,救急実態調査は地域の救急体制構築のための基礎的資料として有用と考えられ,それぞれの地域での確立が望まれる。
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鈴木 昌, 堀 進悟
原稿種別: 原著
2010 年13 巻3 号 p.
303-309
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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目的:救急患者の受け入れ困難は,現場滞在時間(Tl)や搬送所要時間(T2)を延長させると考えられる。本研究の目的は,これらが延長していた患者の特徴を検討することである。方法:平成18年から3年間に,東京23区内から救急搬入された11,155人を対象にT1≧30分,T2≧30分の患者の特徴をロジステイック回帰分析で抽出した。結果:T1≧30分の患者は入院適応,意識障害,および救命対応で多かった。T2≧30分の患者は入院適応,高齢者,および急病で多かった。T2≧30分の患者においてTl≧30分であった患者の割合は,T2<30分の患者と比較して多かった(Odds ratio 2.67,95%信頼区間:1.96-3.65)。結語:T1とT2が延長する患者は入院を要する患者であった。また,T2延長を余儀なくされた患者では,T1が延長していた。救急隊の現場滞在と搬送所要時間の延長は,救急患者の受け入れ困難が一因と考えられた。
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―医療崩壊の進む徳島県の過疎地域におけるドクターヘリ搬送候補は年間300件以上ある―
上山 裕二, 濱口 隼人, 石川 幸一, 山中 明美, 吉岡 一夫
原稿種別: 原著
2010 年13 巻3 号 p.
310-318
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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背景:徳島県南部II医療圏は,高次医療機関まで陸路1時間以上を要する人口2万余の医療過疎地である。消防防災ヘリの医師ピックアップ方式による搬送体制がH20年8月より開始されたが,利用は月数件にとどまる。目的:ヘリ搬送の需要予測を算出し,ドクターヘリ(DH)導入にむけた基礎的データとする。方法:19年4月から20ヶ月間に地元消防が30分以上かけて搬送した重症例を解析した。また救急隊へのアンケートからヘリ搬送に至らなかった理由を探った。結果:396例の重症例のうち搬送に30分以上要したものは129,このうち日中の搬送例は67。これらがヘリ搬送候補と考えられた。当県の山間へき地人口を約15万人とすると,ヘリ搬送候補は年間300件以上あると算出された。ヘリ要請しなかった理由は,陸路が早いと判断した,オーバートリアージを非難されるのを恐れた,などがあった。結論:医療崩壊の進む地域こそDH導入が必要であり,まず関係者の理解を深めることが重要である。
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―とくに実習項目Aについて―
川井 桂, 吉川 惠次, 和田 貴子, 沼上 清彦, 大橋 教良, 田辺 敦, 森下 伊津夫, 神納 光一郎, 田中 秀治, 太田 宗夫
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
319-327
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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全国救急救命士教育施設協議会では,教育の質的向上を目的として,平成11年度より会員校の病院実習の履修状況についてアンケート調査を実施している。平成19年度までに病院実習を行っている会員校21校に対して,法令「救急救命士養成所の実習要領及び救急救命士に指示を与える医師の確保について:臨床実習施設における実習の細目(A~D)」に規定された項目(以下:実習項目)を調査した。ここでは,実習項目のうち「実習項目A」の実施率について報告した。結果:実習項目Aの実施率は,多くの項目で高率であったが,「精神科領域の処置」,「小児科領域の処置」については実施率が低かった。また,「酸素投与」,「胸骨圧迫心マッサージ」など養成校間で実施率に差がある実習項目も認められた。よりよい病院実習の実施には,医療機関からの協力を前提とし,各校が実習施設との密な情報交換を行い,改善をはかる努力が大切である。
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―外傷救急の標準化に向けての県MC外傷分科会の取り組みより―
北川 喜己, 田中 孝也, 浅岡 峰雄, 鈴木 伸行, 上山 昌史, 小川 裕, 後藤 玲司, 齋藤 裕計, 田久 浩志, 野口 宏
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
328-333
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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目的:愛知県「救急体制の整備に関する基本指針」標準化外傷分科会では,外傷に対する救急隊活動の現状を把握するため,基礎データとなる外傷活動調査を実施した。方法:県下各ブロックの5つの救命救急センターに2007年7月の1ヶ月間に搬送された全外傷患者480例を対象とし,救急隊が搬送時に状況評価,初期評価,全身観察,ロードアンドゴー(以下L&G)判断,施行した処置などを調査票に記入,後日医療機関が診断名,ISSなどの重症度や転帰を記入して検証を行った。結果:救急隊の状況評価,初期評価,全身観察におけるL&Gの判断精度はそれぞれ78%,81%,55%,L&G判断時に必要な全脊柱固定,酸素投与,頸椎固定の3つの処置の実施率は初期評価, もしくは全身観察でL&Gとなった群では66.6~80.6%,状況評価でL&Gとなった群では40~72.5%と不充分な結果であった。結論:救急隊の外傷教育では,高エネルギー事故や生理学的徴候の評価の仕方,L&G判断時の必要な処置について重点的に指導する必要がある。
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白井 邦博, 豊田 泉, 村上 啓雄, 吉田 省造, 加藤 久晶, 土井 智章, 中野 志保, 竹田 啓, 山田 法顕, 小倉 真治
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
334-340
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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外傷患者に対する抗菌薬の基本的使用基準を作成し,その現状を調査した。対象は256例で,救急医のICDがいなかった前期と,救急医がICDを修得しICTを強化した後期で,感染率や予防的・治療的使用状況,感染部位や起炎菌について検証した。両群ともISS高値例が多く,感染率は後期(18.1%)が前期(29.2%)に比して有意に低率だった。予防的投与例のうち不必要な投与率は,後期(5.7%)が前期(25.9%)に比して有意に低率だった。治療的投与は,感染率の低下もあって,後期で有意に投与率が低下した。empiric投与後のde-escalation施行率は,後期(51.6%)が前期(21.2%)に比して有意に高率だった。両群とも感染部位は肺と尿路が,起炎菌は耐性菌が多かった。基本的使用基準の設定と,救急医が感染症専門医とともにICTとして活動することは,抗菌薬の適正使用に有用である と考えられた。
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白子 隆志, 野口 宏, 荒木 恒敏, 上山 昌史, 北川 喜己, 竹内 昭憲, 高橋 立夫, 花木 芳洋, 河内 健二
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
341-348
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
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名古屋市の病院外心肺停止(以下,院外CPA)症例に対する救急救命士薬剤投与の現状と予後に与える影響を調査した。平成19年の名古屋市院外CPAは1,862例(心原性62%)で,愛知県救急隊心肺蘇生法プロトコールの薬剤投与適応症例は957例(51%),うち薬剤投与認定救急救命士(以下,薬剤救命士)同乗は486例(26%),薬剤投与実施は146例(8%)であった。薬剤救命士同乗での非実施症例は340例であり,穿刺困難などスキル面での理由が50%を超えた。全心拍再開は629例(34%),入院372例(20%),社会復帰52例(3%)であった。院外心拍再開179例では,入院129例(72%),1ヶ月生存75例(42%),社会復帰44例(25%)で,入院後心拍再開例よりも有意に高率であった。薬剤投与症例の院外と入院後心拍再開では,1ヶ月生存,社会復帰で有意差を認めなかったが,薬剤救命士同乗隊の心拍再開率,社会復帰率も包括救命士隊よりも有意に高値であった。今後,薬剤投与症例の増加と予後の改善には,薬剤救命士の増員,バイスタンダーCPRの普及,救急隊員病院実習でのスキル向上,チーム訓練での時間短縮などが必要であると考えられた。
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重田 はるみ, 岡田 亜紀, 山本 裕梨子, 鎌田 八重子, 黒木 みちる, 上谷 節雄, 中山 伸一, 小澤 修一
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
349-355
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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当センター開設と同時に開始した救急救命士研修は5年が経過した。救急救命士にとって有意義なものとなっているか,今後の課題を明らかにするために,当センターで研修を受け入れた救急救命士を対象にアンケート調査(研修のほとんどを占める生涯教育研修について)を行った。アンケート結果から,全体的に満足度の高い研修ができていることがわかった。現場活動に直結する研修項目の必要度は高く,初療とドクターカーでの研修はともに95%以上が必要と答えていたが,ICUは32%が不必要という回答であった。また,研修項目として必要度が69%以下となった項目の1つにナーシングケアがあった。ICU研修ヘのニーズが低い結果となったが,救急患者の回復過程を知ることはICU研修の大切な目的であり,必要ないという回答が多いことは大きな問題と考えられた。
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阪本 雄―郎, 益子 邦洋, 松本 尚, 横田 裕行
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
356-360
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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背景:わが国の外傷診療の整備は欧米と比べ遅れていたが,2004年より本邦における外傷登録制度であるJapan Trauma Data Bank(JTDB)が開始された。このJTDBのデータによって今後,本邦における外傷診療の質の評価がさまざまな方面から報告されると考えられる。また,近年ドクターヘリやドクターカーを用いた病院前の医療活動が徐々に普及しておりその有用性が報告されているが,全国的な評価は少ないのが現状である。対象と方法:JTDBに登録された20,260例中,RTSが0および不明な例を除く14,422例を対象として,病院までの搬送法により救急車,ドクターカー,ドクターヘリ,自家用車,独歩の5群に分け,それぞれの外傷重症度(ISS,RTS,Ps値)および転帰を比較検討した。結果:ISSは救急車症例が15.3 ± 11.9であるのに対して, ドクターカー症例23.6 ± 14.8(p<0.0001),ドクターヘリ症例19.0 ± 12.4(p<0.0001)といずれも有意に高値であり,RTSも救急車症例7.26 ± 1.17に対し,ドクターカー症例6.89 ± 1.49(p<0.0001),ドクターヘリ症例7.12 ± 1.26(p=0.0009)と有意に低かった。Ps値も救急車症例が0.90 ± 0.19であり,ドクターカー0.80 ± 0.29(p<0.0001),ドクターヘリ症例0.87 ± 0.22(p=0.0036)は有意に救命困難な症例であったが,死亡率は救急車10.5%,ドクターカー19.3%,ドクターヘリ12.6%と救急車とドクターヘリの間では有意差を認めなかった。また,有意に重傷例であったドクターカー症例はドクターヘリ症例(p=0.0040)および救急車症例(P<0.0001)と比べ有意に転帰は不良であった。まとめ:ドクターカーやドクターヘリによる搬送症例は有意に重症例が含まれていたが, ドクターヘリ症例と救急車症例では転帰に差を認めず, ドクターヘリ搬送によって転帰を改善しうる可能性が示唆された。
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―香川県におけるハイブリッドコース開催経験より―
中村 丈洋, 細見 直永, 黒田 泰弘, 市原 新一郎, 関貫 聖二, 竹内 広幸, 伊藤 勝博, 安心院 康彦, 田宮 隆, 奥寺 敬
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
361-368
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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目的:脳梗塞の決定的な治療であるrt-PAが2005年10月より保険適応になり,脳卒中初期対応の重要性が認識されるようになった。脳卒中初期診療(ISLS)および脳卒中病院前救護(PSLS)コースが開発され,全国的に学会併設で開催されている。しかし,地域医療の向上が目的でもあるので,地域での定期開催が理想である。地方ではコース開催が限られており, しかもスタッフ不足などの問題もある。その解決策の1つとして,ISLSとPSLSを組み合わせたハイブリッドコースとして開催する方法がある。われわれは「すべての医療従事者が同じ目線で脳卒中初期対応を学ぶ」を目標として,地方レベルで地域連携型のISLS/PSLSハイブリッドコースを開催し検討したので報告する。方法:基本的に半日4時間のコースの設定で「意識障害の評価」,「脳卒中スケール」,「呼吸・循環管理」,「症例検討(提示)」の4ブースに分かれて施行。受講生の職種に合わせ到達度を設定しスキルを行った。コース後にアンケート調査を行い検討した。結果:アンケートで受講生215名から回答を得た。開催形式に関して,ハイブリッドコースがよいと回答した割合が77%であった。職種別の到達度も,医師90.1%,看護師84.0%,救急救命士86.5%であった。結論:これらの結果から脳卒中シミュレーション研修においてハイブリッドコースは可能であり,質の高いコースを定期開催することで地方レベルでの脳卒中診療において地域連携に貢献できると考えられる。
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―早期転院の工夫―
八坂 剛一, 榎本 真也, 柏浦 正広, 坪井 謙, 藤原 俊文
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
369-374
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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高齢化,疾病増加に伴い入院適応の救急患者は増加しており,二次救急病院でも出日問題は,救急医療需要に応えるための重要課題である。当院救急部は,開設当初より,限られた病床数で集中治療を除く時間外緊急入院患者に対応してきた。入院病床を確保するために,以下の方策をとっている。①患者搬送・入院時にあらかじめ転院となる可能性があることを患者に承知いただく。②毎日2回のカンファレンスを行い,各診療科と協議し治療方針を決定する。③他院でも対応可能症例では,患者・家族と相談し医師同士の情報交換で積極的に紹介転院している。2008年は入院患者2,087人,転院率18.6%,転院患者の病棟滞在日数平均2.9日と早期転院を実現して,救急車の受け入れ増加につながっている。医療機関ごとの医療スタッフ,救急病床確保の困難な今日,地域に救急後方病床を求めることは,出口問題の1つの解決策と考える。
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末廣 吉男, 森谷 裕司, 山口 京子, 夏目 恵美子, 井上 保介, 武山 直志, 中川 隆, 野口 宏
原稿種別: 調査・報告
2010 年13 巻3 号 p.
375-379
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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近年,臨床検査関連団体や学会が認定する専門臨床検査技師制度の普及により,専門分野に特化した臨床検査技師が増加している。しかし,救急医療に関連した専門臨床検査技師制度の整備は遅れている。当院では,緊急検査担当の臨床検査技師が救急蘇生外傷治療室にて検査関連業務を実施することで,医師による検査依頼から結果確認までの時間(TTAT:Therapeutic turn around time)を従来と比べ約22分間短縮した。救急蘇生外傷治療室における初療時検査は,病態把握や治療方針決定のために実施されるものであり,医師が最も必要としている検査結果を推測し,的確な検査項目について結果報告することが重要である。これらを実践するため,救急医療に携わる臨床検査技師にはさまざまな疾患に対応するための幅広い臨床検査知識や技術のほかに,救急医療の基礎知識および技術の習得が必須であると考える。救急医療における臨床検査技師の専門性とは,積極的に救急医療の現場へ介入して検査関連業務を実施し,検査依頼から結果確認までの時間を短縮するとともに,医師や看護師が本来業務に特化できるように業務支援することであると考える。
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西内 辰也, 松岡 哲也, 井戸口 孝二, 大須賀 章倫, 浅井 典昭
原稿種別: 事例報告
2010 年13 巻3 号 p.
389-393
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
フリー
泉州二次医療圏では,関西国際空港における航空機事故を想定した災害救助訓練や,地域メディカルコントロール協議会が主催する救急救命士対象の勉強会を通じ,災害時の救護活動訓練・教育を行ってきた。しかし,高速道路のトンネル内で発生した車1台とバス3台による多重衝突事故において,地元消防機関,大阪府立泉州救命救急センターの医療班が現場に出動し傷病者の救護にあたったが,消防・医療機関間の連携が不十分で,事故現場での救護活動および医療機関への傷病者搬送に問題がみられた。今後適正かつ円滑な救護活動を実践するためには,①災害時の救護活動に関する両機関共通の行動原則の策定,②行動原則に基づいた訓練と活動,③実際の救護活動の検証,④行動原則の修正,を両機関合同で実施できる体制の整備が必要である。
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尾中 敦彦, 片山 祐介, 岡 宏保, 日野 裕志, 渡瀬 淳―郎, 切通 雅也, 松阪 正訓, 塩野 茂, 田伏 久之
原稿種別: 症例報告
2010 年13 巻3 号 p.
394-398
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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鈍的脾損傷の治療方針を決定するうえで,血管損傷の有無は重要な因子であり,multidetector-row computed tomography(以下MDCT)が診断に有用とされる。今回,鈍的損傷に伴う外傷性脾動静脈瘻を,CT angiogaphyにより描出し得た症例を経験したので報告する。症例は78歳男性。転倒して左側胸部を打撲し,脾損傷を指摘され当センターに転院された。MDCT所見では腹腔内出血および脾損傷(脾損傷分類2008(日本外傷学会)Ⅱ型)を認め,CT angiographyを含めた再構成画像では仮性動脈瘤および外傷性動静脈瘻の存在が疑われた。血管造影で仮性動脈瘤および外傷性脾動静脈瘻が確認され,選択的動脈塞栓術を行った。自験例ではMDCTによるCT angiographyが外傷性脾動静脈瘻の診断に有用であった。
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杉村 朋子, 松尾 邦浩, 大田 大樹, 町田 稔, 村山 貴裕, 村井 映, 喜多村 泰輔, 石倉 宏恭
原稿種別: 症例報告
2010 年13 巻3 号 p.
399-404
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
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症例は82歳女性。某年12月7日より感冒様症状が出現し,臥床傾向となった。8日から軽度の呼吸困難が出現し,食思不振が持続したため11日に近医を受診した。胸部X線写真で心拡大を認め,心エコー検査では右心系の拡大と右室内に血栓が疑われた。推定肺動脈圧60mmHgと高値であることから,同日に精査加療目的で転院となった。呼吸困難は軽度で,胸痛やチアノーゼなどの随伴症状はなかった。胸部造影CT検査では両側の肺動脈と右室内に陰影欠損を認め,下肢静脈エコー検査にて両側深部静脈に血栓と思われる陰影を確認した。肺血栓塞栓症と右室内血栓に対し,Tissue-type Plasminogen Acivator療法を開始したところ,翌日には右室内血栓は消失し,呼吸困難は改善,推定肺動脈圧も徐々に低下した。その後,下大静脈フイルターを留置し,抗凝固療法を継続した。以後,全身状態も改善したため,継続加療目的で12月22日に近医へ転院となった。
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田端 志郎, 瀬恒 曜子, 藤本 翼, 大矢 亮, 日下 荘一
原稿種別: 症例報告
2010 年13 巻3 号 p.
405-409
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
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アナフイラキシーにより誘発された冠攣縮の2症例を経験した。症例1は60歳代,男性。魚介類を食べた後にアナフイラキシー症状が出現し救急搬送された。胸部症状はなかったが,救急車内のモニター心電図でST上昇を認めた。救急室到着時にはST上昇は改善しており,入院後の冠動脈CTでは有意狭窄を認めず,アナフイラキシーにより誘発された冠攣縮と考えた。症例2は60歳代,男性。セフトリアキソン点滴静注後にアナフイラキシーショックとなり救急室に搬入された。心電図でⅡ,Ⅲ,aVFにST上昇を認めたが,アドレナリンの筋注で血圧は安定し,またST上昇も改善した。症例1と同様にアナフイラキシーにより誘発された冠攣縮と考えた。アナフイラキシー患者の対処時には冠攣縮の併発に注意する必要があると考えた。そしてショック時には,アドレナリンの投与が有効であると考えた。
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竹中 隆一, 石井 稔浩, 濡木 真一, 土肥 有二, 森山 初男, 和田 伸介, 石井 圭亮, 宮崎 英士, 熊本 俊秀, 古林 秀則
原稿種別: 症例報告
2010 年13 巻3 号 p.
410-415
発行日: 2010/06/30
公開日: 2023/03/31
ジャーナル
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症例は22歳の男性。気管支喘息重篤発作による著明な高炭酸ガス血症および呼吸性アシドーシスを認め,ショックで生命の危機に瀕していた。患者の所在地から当院まで直線距離は約55kmで所要時間70分以上と推定されたため,救急車によるドッキング搬送を行った。ドッキング後,ただちに緊急処置を開始するとともに病院へ情報伝達し,病院到着後ただちに集中治療室へ搬入した。内科的薬物治療に反応が乏しかったため,膜型人工肺およびイソフルレン吸入麻酔などの集中治療を行い,その後呼吸状態の改善が得られ,第15病日に神経学的後遺症を残さず退院となった。病院到着前から集中治療までの一連のスムーズな治療の連携が奏功したと考えられた症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する。
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