2010 年 13 巻 3 号 p. 399-404
症例は82歳女性。某年12月7日より感冒様症状が出現し,臥床傾向となった。8日から軽度の呼吸困難が出現し,食思不振が持続したため11日に近医を受診した。胸部X線写真で心拡大を認め,心エコー検査では右心系の拡大と右室内に血栓が疑われた。推定肺動脈圧60mmHgと高値であることから,同日に精査加療目的で転院となった。呼吸困難は軽度で,胸痛やチアノーゼなどの随伴症状はなかった。胸部造影CT検査では両側の肺動脈と右室内に陰影欠損を認め,下肢静脈エコー検査にて両側深部静脈に血栓と思われる陰影を確認した。肺血栓塞栓症と右室内血栓に対し,Tissue-type Plasminogen Acivator療法を開始したところ,翌日には右室内血栓は消失し,呼吸困難は改善,推定肺動脈圧も徐々に低下した。その後,下大静脈フイルターを留置し,抗凝固療法を継続した。以後,全身状態も改善したため,継続加療目的で12月22日に近医へ転院となった。