2010 年 13 巻 5 号 p. 604-610
救急現場の環境や動作は日常とは大きく異なるため身体負担は大きく,腰痛などの身体障害により現場活動に支障をきたす隊員も少なくない。救急活動中の身体負担に関するアンケート調査を行った結果,救急活動中に794名(93.9%)が身体負担を感じており,負担部位は腰部が最も多く(625名78.7%),ストレッチャーの上げ下げ時に最も負担を感じていた(376名47.4%)。身体負担を軽減させるための技術であるボディメカニクスについて言葉と内容を知っていたのは23名(2.7%)で,言葉も内容もまったく知らなかったと492名(58.2%)が回答した。身体負担の発生頻度は年代別に有意差が認められたが(p<0.05),体格別, トレーニング実施有無別,ボディメカニクス認知度・理解度別では有意差は認められなかった。救急活動は腰痛などの身体障害が必ず起こりうる活動環境であり,身体負担を軽減させるために,ボディメカニクスに基づいた活動姿勢を普及させ実践する必要がある。