これまでに救急救命士が複数乗務した体制による救急活動が,院外心肺機能停止患者の転帰にどのように影響するかは検討されていない。今回,2008年の神奈川県相模原市における院外心肺機能停止症例(467例)を対象として,救急救命士2人体制が院外心肺機能停止患者の転帰にどのように影響するかを検討した。ウツタイン様式および救急隊活動報告書に基づき,症例を1人体制(130例)と2人体制(337例)の2群に分け,心拍再開率,1ヶ月生存率を比較検討した。心肺機能停止症例全体,心原性心肺機能停止症例,目撃あり・心原性心肺機能停止症例では心拍再開率,1ヶ月生存率は体制による差はなかった。しかし,目撃あり・心原性・除細動適応心肺機能停止症例(28例)の1ヶ月生存率では2人体制53.3%(15例中8例,うち機能良好4例),1人体制7.7%(13例中1例,うち機能良好1例)と有意差が認められた。さらに詳細な分析では,バイスタンダーCPRの有無や平均特定行為処置数には体制別で差がなかった。また,目撃から除細動開始までの時間も2人体制10.5 ± 6.9分,1人体制12.5 ± 8.2分で有意差はなかった。以上の結果より,目撃あり・心原性・除細動適応心肺機能停止症例では,2人体制が1人体制より1ヶ月生存率が有意に高いことが明らかになった。その原因として,目撃から除細動までの所要時間が短いことが考えられたが,短い傾向があることは認められたものの有意差はなかったので, 目撃から除細動までの所要時間だけでなくその他の原因も考えられた。2人体制が院外心肺機能停止患者の転帰を改善する可能性が示唆された。