日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
症例報告
門脈,脾静脈,上腸間膜静脈血栓症を合併した多血症の1例
川野 恭雅石倉 宏恭田中 潤一大田 大樹市来 玲子吉兼 誠坂 暁子山崎 繁通
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 13 巻 5 号 p. 668-674

詳細
抄録

腸間膜静脈血栓症は比較的まれな疾患で,特異的症状を示さないことよりしばしば診断に難渋し,その予後は良好とはいえない。今回われわれは,多血症が原因で発症した門脈,脾静脈,上腸間膜静脈血栓症の1例を経験したので報告する。症例は71歳,男性。半年前に多血症を指摘されるもとくに自覚症状なく放置していた。1週間前より腹部膨満を自覚し,下血と気分不良,血圧低下により当センターヘ搬入された。腹部造影CT検査などの画像検査にて広範な腸間膜静脈血栓症と診断され,直ちにAT製剤と低分子ヘパリンの併用による抗凝固療法を開始したが,検査所見にて血栓症の進行を認め第9病日に死亡確認となった。腸間膜静脈血栓症は,一般的に発症早期からの抗凝固療法が重要であり,来院の遅れが救命し得なかった原因の1つと考えられた。多血症患者に関しては,本疾患を念頭においた注意深い観察が大切であり,また治療に関しては今後も十分な検討が必要である。

著者関連情報
© 2010 日本臨床救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top