日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
熱傷治療中に生じた気管狭窄の1例
森本 文雄吉岡 伴樹澁谷 正徳鈴木 義彦船越 拓
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キーワード: 熱傷, 気管狭窄
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2011 年 14 巻 1 号 p. 63-65

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抄録

症例:18歳男性,火薬を詰めた空き缶を首に巻き引火爆発させ,頸部を中心に前胸部,背部がⅢ度20%,両上肢がⅡ度5%の25%熱傷を受傷した。喉咽頭にはススが付着する程度で,頃声や気道狭窄症状などの気道熱傷の所見は乏しかった。第7病日に創感染から敗血症,DICを呈し,人工呼吸管理となった。デブリドメント手術と2回の植皮術を行い,敗血症から離脱し第29病日に抜管した。第40病日ごろより,体動時の呼吸困難が出現し始めた。第54病日のCTでは,声門直下より全周性に気管が5cmにわたり狭窄し,狭窄部最小直径は6mmだった。ステロイド吸入による保存的治療を開始するも,症状は次第に増悪し,第70病日には安静時にも呼吸困難が出現し,第75病日にPCPS下での気管切開となった。気管切開後に行った気管支鏡では,声門下で気管が完全閉塞していた。植皮術を追加し第141病日に転院,ブジーとレーザー焼却,Tチューブの留置を受け退院した。まとめ:熱傷治療中に生じた気管狭窄の1例を経験した。急性期に気道熱傷の所見が乏しくても,長期の挿管管理により,慢性期に気管狭窄を起こすことがあり,注意が必要と思われ報告した。

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© 2011 日本臨床救急医学会
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