日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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原著
急性期脳梗塞患者における受診遅延の要因に関する検討
廣田 哲也則本 和伸矢田 憲孝宇佐美 哲郎菊田 正太岩田 博文村瀬 翔三木 豊和大橋 直紹端野 琢哉
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2011 年 14 巻 5 号 p. 585-590

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抄録

背景:2005年に発症3時間以内の脳梗塞に対する経静脈的血栓溶解療法(t-PA療法)が認可されたが,本邦における実施例は脳梗塞患者全体の約2%とされている。対象と方法:2009年3月~11月に当院救急外来で脳梗塞と診断された138例を対象に,発症から受診までの時間に関与する患者要因について前方視的に検討した。結果:t-PA療法を適用し得る3時間未満の早期受診例は49例(36%),t-PA療法の実施例は7例(5%)を占めた。救急搬送例は50例(36%)で, 自己来院例と比較して早期に受診した。3時間以上の受診遅延に関与する独立因子は,発症時の対応(経過観察)(odds ratio 16.8,p<0.001),独居(odds ratio 9.6,p=0.003),意識障害なし(odds ratio 53,p=0.02)であった。意識清明で認知症を有さない104例のうち,受診決定者が脳卒中を危惧した症例は52例で,うち「直ちに受診を要する」と判断したのは28例であった。考察:脳卒中の症状とともに,発症早期におけるt-PA療法の有効性や救急車利用の重要性について,より社会全体に啓発する必要がある。

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© 2011 日本臨床救急医学会
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