日本臨床救急医学会雑誌
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調査・報告
心肺停止症例の搬送先病院選定における消防司令センター常駐の救命指示医師による受入要請制度(横浜市救命指導医制度)の効果
森脇 義弘鈴木 範行成原 健太郎桝井 良裕山本 俊郎伊巻 尚平八木 啓一北野 光秀木下 弘壽松原 正之
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2011 年 14 巻 5 号 p. 591-598

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抄録

背景:救急症例の搬送先病院選定までの時間延長が問題化している。横浜市では,消防司令センター常駐の救命指示医師(救命指導医)の仲介で,心肺停止(cardiopulmonary arrest,以下CPA)症例を直近の指定病院へ搬送するシステムを構築し,確実な搬送先病院の確保と搬送までの時間短縮に努めてきた。目的:横浜市のCPA搬送先病院選定システムが搬送先病院の選定時間の短縮に有効か否かを明らかにする。対象と方法:対象は1年間の病院外CPA 4,971例。救命指示医師の業務記録から病院選定経過と搬送先病院決定までの時間,選定制度自体の確実性を検証した。結果:直近指定病院への搬送適応と判断された2,989例のうち,98.9%は直近指定病院,1.0%は受入不能で次に近い指定病院,0.1%は3回目の要請で搬送が決定した。2回以上要請の33例の搬送先決定時間の延長は平均2.1分であった。通院中医療機関への搬送が妥当と判断された420例のうち,96.1%は1回の要請で通院中医療機関,3.3%は通院中医療機関で受入困難とされ直近指定病院,2例では直近指定病院でも受入不能とされ次に近い指定病院へ搬送した。2回以上要請の16例の時間延長は平均3.3分であった。結論:本制度により院外CPA症例の搬送先病院の選定は迅速確実に行われ,その実効性も高く維持されていた。

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© 2011 日本臨床救急医学会
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