2012 年 15 巻 3 号 p. 418-423
背景:指令管制員の口頭指導は,病院外心肺停止(以下OHCPA)例への市民の心肺蘇生(以下,CPR)を直接支援できる。非OHCPA例のOHCPAとの誤認やCPR合併症の懸念は,口頭指導やCPRを躊躇させる。非OHCPAへのCPR合併症の頻度を調査した。対象と方法:指令管制員の口頭指導を受け市民がCPRを実施したが,救急隊がOHCPAを確認できずCPRを実施していない症例(F-OHCPA例)で,横浜市救命指導医体制下の6病院に搬送された32例を対象とし,実臨床上必要で行われた検査,自覚症状と身体所見からCPR合併症を調査した。結果:6例で初期診療中にCPRの実施が判明し,入院は20例,死亡退院2例の死因はCPRとは無関係(脳出血,肺炎)であった。CPR合併症と思われる病態は認めなかった。結論:F-OHCPA例への市民による短時間のCPR合併症は低頻度で,OHCPAと確証しきれない症例への口頭指導と市民のCPRは安全と思われた。