2013 年 16 巻 1 号 p. 25-29
頸部化膿性脊椎炎・脊髄炎を併発した原発性腸腰筋膿瘍の1例を経験した。症例は84歳の男性。腰部脊柱管狭窄症の疑いで近医入院中,発熱と意識障害をきたし当院へ紹介入院となった。精査の結果,原発性腸腰筋膿瘍による敗血症と診断し保存的加療を行ったが,入院4日目にショックとなり外科的切開排膿を実施した。術後全身状態は改善したが,入院10日目に抜管したところ頸部痛,四肢麻痺,胸郭運動の消失が認められた。頸部単純MRIを施行したところ,第3第4頸椎椎体・椎間板および歯突起から第6頸椎椎体までの高さの脊髄に,T2強調画像において高信号領域が認められ,頸部化膿性脊椎炎による脊髄炎と診断した。頸部化膿性脊椎炎の併発例の報告は本邦で2例のみであるが,実際は診断に難渋する脊椎炎が見逃されている例が少なくないと考えられるため,原発性腸腰筋膿瘍と診断した場合には,他部位への血行性感染を考慮に入れて評価を行うべきである。