日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
Print ISSN : 1345-0581
ISSN-L : 1345-0581
症例報告
片側末梢性顔面神経麻痺で発症した 超高齢者破傷風の1例
徳田 隼人中村 覚粛村上 大道家永 慎一郎白馬 雄士冨岡 譲二一ノ瀬 誠
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 16 巻 5 号 p. 682-686

詳細
抄録
症例は90代女性。受診5日前より右顔面違和感を自覚し,4日前より開口障害があり,当院へ紹介来院された。来院時,右側末梢性顔面神経麻痺を伴う開口障害と血圧変動を認めた。経過から破傷風と診断し,集中治療室(以下ICU)へ入院した。全身性痙攣が頻発したため鎮痛鎮静下に人工呼吸管理としたが,右側顔面神経麻痺は持続した。最後の全身性痙攣が第63病日に観察され,同日以降右側顔面神経麻痺も消失した。本症例は,片側脳神経麻痺で発症した脳神経型破傷風が,全身型へ移行したものであったが,2つの型の破傷風が同時期に改善した点でもまれでありこのような報告例は他に見当たらなかった。脳神経麻痺が典型的な破傷風症状である開口障害に先行する場合,初期診断を誤る可能性がある。近年高齢者の破傷風症例が増えているが,予後は若年者と変わらないという報告もある。本症例も積極的な集中治療で後遺症なく社会復帰できたので報告する。
著者関連情報
© 2013 日本臨床救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top