日本臨床救急医学会雑誌
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症例報告
アルコール性ケトアシドーシスに対する高流量持続的濾過透析の施行経験
粕谷 忠道庄古 知久吉川 俊輔八木 雅幸成田 知大
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2015 年 18 巻 3 号 p. 528-531

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抄録
アルコール性ケトアシドーシス(alcoholic ketoacidosis:AKA)は,過剰なアルコール摂取により脱水,飢餓状態が続くことで発症し,死に至ることもある。症例は70歳男性で大酒家。来院時,意識障害,膀胱温31.3℃,血糖30mg/dL,pH 6.740,HCO3 3.8mEq/L,乳酸21.4mmol/L,アニオンギャップ 48.2mEq/Lを認めた。収縮期血圧も50mmHgまで低下した。このためブドウ糖とビタミンB1,B6,B12を投与し,約4Lの大量輸液とノルアドレナリン投与を行い,保温に努めた。しかしショックが遷延し,離脱するためには血中の原因物質を除去すべきと判断し,ICUで持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を導入した。透析液流量3,500mL/hr,補液流量1,500mL/hr,濾液と透析液の総流量5,000mL/hrの設定で高流量CHDFを約2時間半続けた。その間に意識障害,低血圧,乏尿,アシドーシスが改善した。後日β-ヒドロキシ酪酸が5,629μmol/Lと判明し,AKAと診断した。第4病日にCHDFから離脱した。今回われわれは高流量CHDFを施行したAKAの一例を経験した。重篤なショックを呈するAKAに対し,高流量CHDFは有効である可能性がある。
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© 2015 日本臨床救急医学会
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