日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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症例報告
出血性ショック後に発生したDICに対して脾動脈塞栓術が著効した多発外傷例
吉田 聖妙伊藤 栄近川淵 久司大串 和久平原 健司加藤 博之瀧 健治
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1999 年 2 巻 3 号 p. 355-360

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抄録

高速道路走行中の自損事故で左腎破裂,骨盤骨折,肝右葉破裂,左大腿骨骨折などを負った患者が出血性ショックのために,直ちに左右内腸骨動脈と左腎動脈の塞栓術,濃厚赤血球,新鮮凍結血漿などの輸血,大量の血小板輸血と肝損傷部の外科的な止血処置を行ったが,血小板数が3×104/μl以上になり回復不能となった。外傷やDICに伴う炎症性サイトカインや,大量輸血が網内系を刺激して脾臓が約9倍に腫大したために,輸血した血小板が脾臓に大量に取り込まれ,血小板数の回復が不能な状態に陥ったものと推察した。そこで,入院7日目に80%の部分脾動脈塞栓術を施行して,機能的脾容量を減らすことにより血小板数減少が抑えられ,血小板数と凝固因子は次第に回復し,DICからも脱却することに成功した。

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© 1999 日本臨床救急医学会
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