1999 年 2 巻 3 号 p. 361-364
アセトアミノフェン,アスピリン,カフェイン等を含んだ感冒薬の大量服用で,急性肝不全に続いて急性腎不全を来し,積極的な治療により軽快させ得た1例を経験した。症例は35歳男性。自殺目的で2種類の感冒薬(エキセドリン®️A錠:24錠,アスゲン®️新感冒錠:60錠)を飲酒しつつ時間をかけて内服した。来院後,急性肝不全の所見がみられ,胃洗浄,N-アセチルシステイン投与,肝庇護剤投与,グルカゴンーインシュリン療法,血液吸着,血液濾過透析を行った。また,急性腎不全を合併し,血液浄化法等の積極的な治療により改善させることができた。この急性尿細管壊死の誘因として,アセトアミノフェンやアスピリン等の感冒薬配合剤とともに,基礎にあった脱水・低栄養,大量の飲酒歴,薬物大量服用から来院までの時間が長かったことなどが考えられた。アセトアミノフェン中毒で急性腎不全を合併することは約0.4%とけっして多くなく,本症例は興味ある1例と考えられた。