目的:前胸部叩打の心臓に対する影響を心臓超音波およびドップラー法を用い,前胸部叩打前後の心収縮,左室内血流速度の観察を行った。対象と方法:当院にて心房粗細動の待機的除細動を行った6例を対象とし,直流除細動直前から前胸部叩打まで心臓超音波法を用い,連続的に記録した。結果:直流除細動,前胸部叩打法いずれの処置でも肉眼的に明らかな心収縮の変化は認められなかった。超音波ドップラー法により観察した左室拡張期急速流入速度は叩打前後で明らかな増加は認められなかった(54.5±7.3cm/sec vs 52.2±10.9cm/sec,p=0.27)。結語:前胸部叩打法の心臓に対する機械的影響はほとんど認められなかった。本法は心室細動より心室頻拍で有効性が高いと思われるが,その効果を得るには可及的早期に行うことが大切と思われた。