2017 年 20 巻 6 号 p. 733-737
症例は34歳の女性でNeurofibromatosis 1(以下,NF1)の既往があり,呼吸困難を主訴に救急搬入された。来院後間もなくショック状態となり,左椎骨動脈破裂の診断で緊急カテーテル塞栓術を施行した。その後,止血したが脳死とされ得る状態となった。若年症例であり家族の希望から臓器移植のドナー適応があるか検討を行った。NF1に合併する全身血管の奇形や脆弱性が問題となり,臓器提供には踏み切れないとの判断に至った。その後,第21病日に死亡退院となった。NF1はvon Recklinghausen 病として知られる先天性疾患であり,血管奇形・脆弱性から血管破裂・出血をきたし,しばしば重篤なショック状態に陥る。NF1に伴う血管奇形は国内でも多く報告される。本例では出血性ショックおよび血管攣縮で脳幹虚血・梗塞から脳死とされ得る状態になったと考えられた。臓器移植適応も検討されたが臓器提供には踏み切れなかった。