2018 年 21 巻 6 号 p. 744-748
大脳性色覚異常が病院選定の決め手となる重要な症状であった脳卒中症例を経験した。症例1は80歳の男性。バイタルサイン,身体所見から脳卒中を疑う所見に乏しかったが,色覚異常をとらえて脳卒中を疑うことで脳神経外科専門医施設への早期搬送につながった。頭部MRI検査で両側後頭葉脳梗塞と診断された。症例2は66歳の男性。言葉が出にくいとの訴えを聴取するも観察の所見では脳卒中の鑑別に苦慮したが,色覚異常をとらえたことで適切な医療機関の選定につながり,左側頭葉の皮質下出血と診断された。大脳性色覚異常を主症状とする脳卒中の存在は以前より知られており,責任病巣は後頭葉腹内側から側頭葉にある。病院前救護で色覚異常をとらえ,適切な病院選定につながった報告は過去になく,時間的猶予のない救護活動で身体所見や脳卒中スケールで脳卒中の鑑別に苦慮した場合に,簡便な色覚異常の観察を加えることで鑑別の精度向上に寄与したと考えられた。