2020 年 23 巻 5 号 p. 665-670
病院に雇用され,院内で勤務する救急救命士には,他職種が行っている業務を分担し,医師,看護師の負担を軽減することなどが求められているが,法制上の制約もあり,担う業務が確立しているとはいい難い。しかし救急救命士は少なくとも3年間の専門教育を受けており,院内のさまざまな業務に柔軟に対応できる医療専門職であるといえる。そのため,長時間労働の是正の担い手になることができるとも考えられるが,全国的に雇用者数は増えているものの,その知識や技能を十分に活用できている事例はほとんど報告されていない。本稿では病院内救急救命士を取り巻く環境に関する一般的課題を整理し,当院に勤務する救急救命士の業務と教育に関する現状,他職種からのタスクシフトに関する取り組みについて報告するとともに,病院に勤務する救急救命士の職能拡大に向けて,施設間搬送に特化した小規模メディカルコントロール体制の構築と診療報酬の拡充について提言し,その課題についても議論する。