日本臨床救急医学会雑誌
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調査・報告
救急搬送状況の推移からみるさいたま市の問題点と日本の近未来像
海老原 貴之守谷 俊
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2020 年 23 巻 6 号 p. 780-787

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抄録

埼玉県の人口10万対医師数は全国最下位である。目的:埼玉の高齢者人口と救急搬送状況を調査し,救急医療の負担軽減策を検討すること。方法:2014〜2016年までの消防局年次報告,総務省統計局人口統計を用い,救急搬送数と高齢者人口増減率を調査検討した。結果:高齢者搬送数増加と生産年齢人口の軽症率が顕著であった。75歳以上人口増加率は6.4%(全国平均3.6%)で全国1位であった。考察:高齢者増加率の急増は,救急医療機関に過負荷がかかるため,地域包括ケアシステムが鍵となる。大宮包括ケアネットは在宅医療患者に対し,医療情報や急変時対応を記載する小冊子を配布し,不要な高齢者搬送の減少に取り組んでいる。結論:今後日本では,埼玉県を含む都市部周辺で急激な高齢者増加による救急医療逼迫のリスクが懸念される。救急相談システムの拡充と地域包括ケアシステムを改良し,救急医療の負担軽減が依然として急務である。

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