2021 年 24 巻 4 号 p. 463-469
近年のautopsy imagingの普及にもかかわらず死因の特定に至らない外因死症例は存在し,死因究明のためには法医解剖が必要となる。頸椎・頸髄損傷は外因死の原因としてあげられるが,外表所見が乏しい場合もあり見逃されている可能性がある。今回われわれは,異状死体の外因死症例における頸椎・頸髄損傷を後方視的に検討した。2014年4月〜2017年12月に,旭川医科大学法医学講座において,異状死体の死因究明のために法医解剖を行った外因死症例546例を対象とした。546例中44例で頸椎骨折を認め,12例で致死的頸椎・頸髄損傷(高位頸髄損傷)を認めた。受傷後に医療機関に搬送された致死的頸椎・頸髄損傷症例の多くで頸椎骨折が見逃されていた。頭頸部外傷では致死的な頸椎・頸髄損傷の原因となり得るため,外傷初期診療や外因死の死因究明の際は常に頸椎・頸髄損傷の可能性を念頭に置く必要がある。