日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
十二指腸潰瘍穿通から仮性胆囊動脈瘤を形成した1例
中村 悠太竹重 加奈子新田 憲市望月 勝徳具嶋 泰弘今村 浩
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2021 年 24 巻 4 号 p. 593-597

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抄録

十二指腸潰瘍が胆囊動脈へ穿通し,仮性胆囊動脈瘤を形成することはまれであり,破裂の際には適切な対応がなされなければ致死的となる。症例は60歳の男性。1カ月持続する腹痛とふらつき,悪寒戦慄を主訴に救急搬送された。心窩部に圧痛,筋性防御があり,直腸診で暗赤色便を認め,造影CTで十二指腸の著明な壁肥厚を認めた。出血性十二指腸潰瘍および 十二指腸潰瘍穿通疑いと診断し,保存的に加療した。入院4日目に貧血の進行と血圧低下があり,造影CTを施行すると十二指腸内に突出する仮性胆囊動脈瘤を認め,十二指腸潰瘍の胆囊動脈穿通からの出血性ショックと診断した。緊急TAEを施行した後に幽門側胃切除術,胆囊摘出術を施行し,経過良好で第36病日に退院となった。十二指腸潰瘍の胆囊動脈への穿通はまれであるが解剖学的に近接しており,胆囊動脈へ穿通し仮性動脈瘤を形成する可能性があることを念頭に診断と治療することが重要である。

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