目的:高齢者施設からの救急搬送の実態を調査し,重点的に取り組むべき適正化への課題を特定する。方法:施設から救急外来に搬送または受診した65歳以上の高齢者を対象に,患者特性,救急受診形態,施設種別,主訴,診断,入院日数,転帰,退院先を後ろ向きに調査した。各施設に利用者の病状変化時の対応を電話で問い合わせた。結果:施設からの救急患者は施設以外群に比べ年齢が高く,女性,平日日中受診,救急車利用,入院,外来死亡が多かった。病状変化時に施設医が対応するのはほぼ老健に限られた。外傷患者は内因性疾患に比べ入院・死亡は少ないが,救急車利用は同等であった。退院後に入院前と別施設に入所する例は在院日数が長かった。結論:老健以外では施設間で急変時対応の経験を共有する仕組みが必要である。とくに外傷患者の救急車利用必要性は再検討の余地がある。また退院後別施設入所例の在院日数が長いことに対策が必要である。