2021 年 24 巻 6 号 p. 791-795
23歳の女性。1カ月前より皮膚科にて難治性蕁麻疹に対して,ジアフェニルスルホン(DDS)の内服を開始。交通外傷で当院に搬送となった。来院時に呼吸苦は認めなかったが,SpO2は酸素10L/ 分マスク投与下で92%と低値であった。右側胸部に圧痛を認め重症胸部外傷を疑ったが,画像検査では異常所見は認めなかった。来院時の動脈血ガス分析ではSaO2 98.8%,PaO2 471.0mmHg とSpO2との乖離を認めた。血中メトヘモグロビン(MetHb)値は11.2%と高値であり,DDSの内服歴があることから,DDS内服に伴うMetHb血症と診断し,それに伴うSpO2とSaO2の乖離と判断した。入院後よりDDS内服を中止し,第5 病日には室内気でSpO2 97%まで改善した。動脈血ガス分析でもSaO2 97.2%でSpO2との乖離も認めず,血中MetHb値も4.0%と低下し,第8病日に退院となった。臨床所見に合致しないSpO2の低下がある際には,SaO2との乖離がある可能性を考慮する必要がある。また,DDSの副作用として薬剤性MetHb血症が起こり得ることを認識する必要がある。