日本臨床救急医学会雑誌
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調査・報告
救急搬送された後期高齢者における治療差し控えの現状調査
山下 寿井上 智博浦部 尚吾徳田 裕二古賀 仁士爲廣 一仁
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2022 年 25 巻 3 号 p. 575-579

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抄録

背景:世界一の高齢社会であるわが国において,今後は医療の必要性・適応を十分検討して,本人および家族の意思に配慮しなければならない。目的:高齢者救急の現場における,治療の差し控えの現状と予後への影響を調査する。対象:2017年に当救命救急センターへ搬送された10,277例のなかの後期高齢者3,199例のうちE-ICUにて加療された200例である。方法:治療差し控えの有無で2群に分け,搬入後30日・90日生存率,SOFA score,ICU滞在日数,退院時転帰を調査した。また両群の基本データとして,年齢・性別・発症時居住場所・栄養状態・発症前のフレイルの有無,臨床診断を調査した。結果:治療差し控えは45例で実施され,搬入後30日・90日生存率は有意に低下しており,搬入前の全身状態は不良であった。考察:差し控え群は,搬入前より全身状態が不良であり,本人・家族が治療・予後に過度な期待をもたないことが,治療の差し控えにつながったものと推察した。

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