日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
ピルシカイニド血中濃度の軽度高値により重篤な副作用が出現した2症例
種田 靖久田中 裕也松岡 知子吉村 知哲
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2023 年 26 巻 4 号 p. 532-537

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抄録

Ic群抗不整脈薬であるピルシカイニド(以下PIL)による重大な副作用報告は,血中濃度が2.0μg/mL以上(有効治療血中濃度域0.2〜0.9μg/mL)によるものが大半であるが,それ以下においても出現した2症例を経験した。症例1は74歳,男性。既往に心不全,狭心症,末期腎不全あり。原因不明の意識レベル低下にて来院。PIL血中濃度は1.56μg/mL。頭蓋内病変などは否定され,PIL中毒による房室ブロックを契機とした意識レベル低下と診断。症例2は86歳,女性。既往に心筋梗塞,慢性腎臓病あり。倦怠感,徐脈あり来院。PIL血中濃度は1.31μg/mL。翌日には徐脈改善し薬剤性洞不全症候群と診断。2症例ともに併用薬にはビソプロロールが含まれていた。β遮断薬との併用による相互作用も考慮され,基礎心疾患を有する患者ではPIL血中濃度の軽度高値により重大な副作用が発現する可能性が示唆された。

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