日本臨床救急医学会雑誌
Online ISSN : 2187-9001
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ISSN-L : 1345-0581
調査・報告
逼迫する大都市圏救急医療システムにおけるキーワード方式ドクターカー運行の多角的有効性の検証
―地域医療圏のニーズに応じた運行様式模索のためのアンケート調査結果―
内田 健一郎松尾 健志脇田 史明河本 晃宏佐尾山 裕生宮下 昌大岡畠 祥憲西村 哲郎藤本 隆志溝端 康光
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2024 年 27 巻 4 号 p. 543-551

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抄録

大都市医療圏において指令からのキーワード方式による前方医師派遣型ドクターカーの出動が地域の医療ニーズに適っているか,現場での重症度判定や早期治療の介入という点での有用性を客観的かつ多角的に評価した研究は存在しない。目的:本調査ではドクターカー出動ごとに救急隊,要請傷病者およびその関係者,傷病者搬送先医療機関にアンケート形式で集約し,地域情勢に求められるドクターカー運行のあり方を検討した。結果:三次搬送適応となる外傷や心肺停止事案において傷病者,搬送先医療機関,救急隊三方向からの需要が高い結果となった。考察:一方,生理学的異常のない重篤疾患を考慮したキーワードによる出動は,大都市医療圏においては搬送選定先病院の選択肢も多いため有用性として課題であり,自院収容を考慮することや搬送先医療機関との迅速な診療情報共有とコミュニケーションの確立,疾患陽性的中率を上げる取り組みが重要と思われた。傷病者関係者からは事案内容にかかわらず精神的安定,信頼につながっていることが示唆された。本調査をもとに,出動基準や出動事案の検証を重ね,都市医療圏において機能的なドクターカー運行体系を整えていく必要がある。

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