日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
ゴセレリン酢酸塩デポ皮下注射後の左下腹壁動脈損傷に対して経カテーテル動脈塞栓術を施行した1例
齋藤 加奈子杉村 朋子知念 巧水沼 真理子梅村 武寛
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2025 年 28 巻 3 号 p. 564-568

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抄録

88歳,男性。前立腺癌に対してホルモン療法中であった。泌尿器科外来でゴセレリン酢酸塩デポ皮下注(14ゲージ針)を左下腹部に投与した。帰宅後に皮下注射刺入部の疼痛が出現し,徐々に疼痛と刺入部周囲の腫脹が増大したため救急要請した。来院時はバイタルサインに異常はなく,左下腹部に膨隆した硬結を認めた。腹部単純CT検査で左下腹壁に巨大な皮下血腫を認め,左下腹壁動脈損傷による腹壁血腫と診断した。圧迫止血を行ったが,血腫の増大と貧血の進行があり,第2病日に経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を施行した。術後は貧血の増悪や血腫の増大はなく第8病日に退院した。皮下注射による下腹壁動脈損傷は比較的まれである。しかし,血液凝固異常や高齢者など皮下軟部組織の脆弱性により広範囲の腹壁皮下血腫を引き起こすことがある。周囲の組織が腹腔内臓器であり,軟らかく圧迫止血が不十分となる可能性があり早期のTAEも考慮すべきである。

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