2025 年 28 巻 5 号 p. 834-840
分節性動脈中膜融解症(segmental arterial mediolysis;SAM)は腹腔内出血や後腹膜出血の原因となり得るが,消化管出血例はまれである。症例は60歳代の男性。10日前から赤褐色の排便があり,4日前に体動困難となり近医救急病院に搬送された。前医では高度貧血を認め,造影CTで膵・十二指腸周囲に血腫が疑われた。消化管出血に対して上部消化管内視鏡検査を施行したが明らかな出血はなく,原因精査のため当センターに転院した。同日の血管造影検査で,前膵十二指腸動脈に動脈瘤形成を含む広狭不整な異常血管を認め,SAMによる出血と考え,動脈塞栓術を施行し止血が得られた。塞栓後は貧血の進行もなく,再出血もないことから,第2病日に前医に転医した。転医後の内視鏡検査では,慢性胃炎は認めるが明らかな出血源は確認できなかった。本症例は,広範囲の動脈瘤部で十二指腸遠位の腸管壁が菲薄化をきたし,瘤破裂時に十二指腸内に出血したものと考えられた。上部消化管内視鏡検査で出血源が同定できない上部消化管出血,とくに十二指腸以遠の出血ではSAMも鑑別になり得ることが示唆された。